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ヘイデンを最後に見たとき、彼は腕も足もなく
火山岩の洞穴の中で生きたまま燃えていた。彼の奥さんは出産し息をひきとるところで、元の親友は彼を死んだと思って彼を置き去りにした。
ヘイデンの一番知られている役、アナキン・スカイウォーカーはダース・ベイダーの黒い衣装を身にまといグローブの中の拳を天に上げノーーー!と映画の歴史でありえなかったような叫び声を上げた。
そして3部作最終章、ギャラクシー、ポップカルチャーでもっとも悪名高き人となったのだった。
でも、ヘイデンはどうなったの?
彼を今、捜したいのならばほんとに何もないところから始めればよい。
一番近いのはゼッファー(Zephy)という村でその村の名前は半分怪物のガイドが必要であるかのように聞こえるが実際にはトロントから北に2時間程離れた所にある。
そのヘイデンのオアシスはシンプルな19世紀の煉瓦造りの農家で新しい木製のデッキがそえてあった。(デッキの近くに木の切れ端、のこぎりが置いてある。)2台の車は雪の下に埋もれている。
ヘイデンはスリムジーンズ姿で薄いソックス、ゆったりとしたフランネル製のシャツで、スクリーンドアを開け迎えてくれた。
ヘイデンには薄っすらとしたヒゲがある。26歳になった今でもヒゲ面は似合わないように見える。
埋もれた自動車やヒゲからしておそらく彼は隠遁生活していたようだ。
ヘイデンは僕にお茶を差し出してくれた。彼はかなりのお茶の種類を取り揃えている。2匹の黒い太鼓腹の豚が足元で鳴いている。それは「バディとパチュニアですよ。」とヘイデンが言う。けっこう最近この2匹を飼い始めたらしい。
「僕はベジタリアンではないけどこいつらを飼い始めてからポークが食べれなくなったんだ。それは辛いこと、特に乾燥ハム(Prosciutto)を食べれないのはね。」
郊外にいるのにもかかわらず、ヘイデンは世捨て人になったわけではない。ここ1年半のほとんどはアナキン・スカイウォーカーではない別の彼を見せるような映画に出演している。その映画は『ジャンパー』。青年がどこにでも移動できる映画だが劇場までの道のりは困難であった。
撮影が始まった2006年8月の2週間前にもともとのトム・スターリッジからヘイデンに主役が変わった。75ミリオンの予算で発表されたプロダクションチームはローマ、パリ、ニューヨーク、東京へと移動し、ローマではクルーがコロッサムにのりこんだ。トロントの撮影ではセットの1部が壊れ落ちてスタッフの一人が亡くなり、一人が重傷という災難に見舞われた。
そしてキャストは再撮影として何回も呼び出された。ダグ・リーマンにはよくあることで彼はこの業界ではヒット作(ボーン・アイデンティティ、Mr &
Mrs スミス)を生み出し壮大な混沌とした映画セットを率いていくことで知られる監督である。「映画が公開されるまで撮影は続けられる、彼独特のプロセスだ。」事前にみんなに警告されたとヘイデンは言う。
僕(ライター)がまだ『ジャンパー』を見ていないことを謝ったらヘイデンは笑って言った。「気にしないで、僕もまだ見ていないんだ。」
自分が20歳のカナダ人(バンクーバーに生まれ、
オンタリオ州ソーンヒル育ち)そして高校を卒業(ユニオンヴィル高校、トロントから少し離れた所)して間もないと想像してみて下さい。
あなたはもとアスリートで(テニスにおいては州でランクされている)カナダの青春ドラマやいくつかの小規模、インディーズ映画などに出演、その中のひとつ(海辺の家)は評価され2002年ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネート。
今度は或る日、オーディションの後にジョージ・ルーカスがあなたを3部作の前章2作品に主演させたいという。それは映画史上もっとも大ヒットした映画である。
あなたはその役を引き受けるにおいてジェダイの騎士、短気でライトセーバーを巧みに使うパダワンのアナキン・スカイウィーカーを永久にイメージ付けられるリスクを負いますか。それともあなたはルーカスにこの役を断ってスターの座とそのギャラを失いますか?
迷いはなかったとヘイデンは言う。彼は高校を卒業したばかりで仕事のことが気がかりだった。そしてここにこんなにすごい好機が舞い込んできた。しかしそれにはあきらかにたくさんの心の負荷がついてくる。それに関してヘイデンは分かっていたが次の機会を待つつもりもなかった。
その決断の成果は私達の周りで見ることができる。たとえば、はじめにこの居心地の良い2百エーカーの土地。巨大な薄いテレビ、そして彼は公式なアナキン・スカイウォーカーのライトセーバーを手元に置いている。
それは本棚にトロフィーのように透明な箱の中に入っていて、ロバート・フロスト(アメリカの国民的詩人)の詩集とウェイン・グレッツキー(カナダ、オンタリオ州出身の元アイスホッケーのスーパースター選手)の自伝の傍にある。
ほとんどの若手俳優は世に出ることを辛抱強く追求していかなければならないがヘイデンは“お皿の上に名声を渡されたのだ。”なぜならルーカスの『スター・ウォーズ』の前章が成功しても、また失敗したとしてもヘイデンの名は多くの人に知られることに間違いなかったから。
彼がその役を貰ったときのあきらかな疑問は次のハリソン・フォード(国際的スター)になるのか、それともマーク・ハミル(永久にひとつの型にはめられた俳優)になるのかということ。
3部作の宇宙を舞台にしたオペラに出演したことは、残念だがヘイデンの俳優としての評価を得ることはできなかった。
2003年に彼は『シャッタードグラス』(ニュースの天才)のスティーブン・グラス役でいくらかのファンを獲得したが、スター・ウォーズに比べてどれだけの人がそれを見ただろう。
多くの映画ファンが覚えているのはアナキン・スカイウォーカーだ。その映画の作り方についてヘイデンは「ジョージは僕達が入ってスクリプトミーティングをしキャラクターについて語ることを求めてはいない。」と言う。
ヘイデンにはもっと可能性がある。
『ジャンパー』のリーマンは『ボーン・アイデン・ティティ』の監督で、ボーンが公開される前はマッド・デイモンがスターだと思ったひとは少なかったと思う。『ジャンパー』が良い結果をだせばボーンのような3部作を私達は見られるかもしれない。
もちろんヘイデンはスター・ウォーズに感謝している。もし時を戻してやり直すことが出来てもこれまで通り何も変えないつもりだ。だけどもう一度やれとは言わないで。
ヘイデンはタバコを吸いながら言う「スター・ウォーズのような映画に出演するために俳優になったわけじゃない。」と。
ジョージ・ルーカスについてはもう十分だろう。キッチンキャビネットについて話そう。
新しいセットがあるがアンティーク風に見せるためクリステンセン自身が表面に手を加えたそうだ。まずは黒い塗料をし、さらに白く塗り、特別なひび模様を作る。
ヘイデンにはいつもたくさんのプロジェクトがあって忙しい。でも木を植え、畑を作り、土を動かしている。そしてラベンダー畑も作りたいと思っているらしい。ラベンダーはあまりメンテナンスはいらないが収穫はすべて手作業なので大変だということだ。家畜も飼いたいと彼は思っている。まずは牛や馬、その後もう少し楽しみたい。羊、やぎ、もしかしてアルパカも一匹。
彼は若くして映画出演ごとにお金も持ち、楽しむ余裕もある。
私達はスノースーツを着てヘイデンの家の隣の小屋に雪を踏みならしながら歩いた。
ヘイデンがドアを開き小道具で詰まっている遊び場を僕に見せてくれた。
新しいトラクター、いくつかのATV(どんなところでも走れる車)そして僕達がここに来た目的である2つの新しいスモーモービル。
そして数分後に僕達は出発した。僕達の前方には何エーカーもの土地の雪景色。
順調に走っていたスモー・モービルが急にグズグズとスローになり止まった。何が起きたか分からないがどうも僕はヘイデンのスモーモービルを壊してしまったらしい。ヘイデンは後戻りして来てスモーモービルの前方から煙が吹き上げたのを見た。そして「ふーん、僕のに乗れば?」と言った。
それからヘイデンは再び行くぞ!と。僕の手はヘイデンのウエストを掴んだ。(riding bitch)雪に覆われた景色の中を僕らは飛んだり、つっかえたりしながらぎこちなく進んで行く。
彼は(ヘイデン)時折、轟音を立てているエンジンの音にまぎれて何か叫んでいる。
「ここに僕は新しい家を建てる予定なんだ。」と彼は言う。「そしてもしかしてもう一つの方はゲストハウスにするかもしれない。」
アナキン・スカイウォーカーと一緒にツンドラ(凍土帯)の上を走っているのは不思議であり嬉しくて、そして何かを恵んでもらう子供のような気持ちである。(Make-a-Wish
Fundation)
ヘイデンはモーターの回転を増し向こうみずにスピードを上げずにいられない。激しく揺れながら僕はヘイデン自身が無傷でなければならないことを彼は十分知っているはずだと思い、自分を元気付けていた。
やっとヘイデンがスモーモービルを家の方向に戻し動き始めた。雪のしぶきで鼻の下を覆われたヘイデンはニコニコ顔だ。ホスに戻って来たルークのようだ。彼はゴーグルをはずしてうわっ、やったと歓声を上げた。一日一回は歓声を上げるようにしていると言う。
スターになって見知らぬ人にジロジロ見られたり、次のキャリアステップのことや型にはめられて見られたりたりしないか、人生で次に何が来るのか心配事もあるが、得たこともあるのだ。それは自由や土地やおもちゃ。その今の生き方を肯定しているからこそこんな歓声を上げられるのだろう。
彼はいつでも細かいひび模様の飾り棚の上をチェックすることが出来る。そこには大きな鉄の文字が刻んである。「ILLEGITIMI NON CARBORUNDUM 」(ラテン語)これは第二次世界大戦の兵士の間のモットーだったんだとヘイデンが説明する。意味は「奴らにやられるな。」だと。
(2009/01 作成)
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